15 Gymnopedie No1

わたしはあなたに言われたとおり、本当に素直に全力であなたにしがみついて、多分あなたにしては随分とゆっくりしたスピードで走っているオートバイから振り落とされないように努力していた。

オートバイの後ろに乗るのははじめてではないけれど、今は夜だし、乗るまでの状況も状況だし、動き始めたときはとにかく必死であなたにしがみついた。

こんなにしがみついたら多分わたしのおっぱいはあなたの背中にぎゅーっと押しくら饅頭みたいになっているんだろうなと思ったけれど、もしかしたらわたしのおっぱいではそれをあなたが肉感として感じることはないかも知れないから、余計な心配をするのはやめた。

少したつと、だんだんそんな状況にも慣れてきて、多分あなたは後ろに座っているわたしにものすごく気を遣っていて、発進や停止やギアチェンジのモーションが素人のわたしでもスムーズだなってわかる。オートマチックの四輪車でもここまでショックなしで運転するのは難しいだろう。

余裕が出てくると欲もでる。あなたの背中にぴったりとヘルメットを当てて、ほとんど目をつむって横を向きながらしがみついていたわたしは、まず、目を開けてみた。

クルマとはまったく異なる、閉鎖的なヘルメット越しの夜景が目に飛び込む。

それはリアルな風景と言うよりも、夢の中か、とても小さなシアターで見る章スクリーンの映画のような風景で、オートバイのスピードに合わせて街の明かりがビュンビュンと後ろに流れていく。

時折クルマが併走し、まるで種類が違う動物同士が決して交わらないように、異世界の中をあなたが運転するオートバイは風を切って走っていく。

もう少し冒険してみようと思って、わたしはあなたの背中越しに前を見る。

最初に目に飛び込んできたのが、中心にあるメーター類。白い文字盤に、一体どうやって読んだらいいのかわからない向きで、針が何かの数字、もちろんそれはスピードと回転数なんだろうけど、を、示している。

その向こうには都会の道路の、本当なら見慣れているはずの景色。

でも、それは今まで見たどんな道路とも違っていて、なんだかSF映画の宇宙船が、ワープするときの星の流れみたいに、いつも自分が運転するのと同じくらいのスピードなのに、見える景色はまったく違っていた。

幾つ目かの信号でオートバイが停止すると、あなたは振り向きわたしに聞こえるように大きな声でこう言った。

「首都高走ってみるか?」

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