14 Je te veux

「じゃあ、楽しかったわ」

ぼくをラブホテルの所定の部屋に呼び出したキミは、ぼくが部屋に乱入すると、一緒にいた細身のイケメンの存在を無視してバスローブを脱いで全裸になる。

そして、床に脱ぎ捨ててあった下着を片手でつまみ、そそくさとそれを身につけ、ぼくの方に歩み寄りながら黒のブラウスとショートパンツを身につけて、

「はあ」

と一つ大きな溜息。

もちろんその視線の先に、彼はいない。

さて、どうするのかなと興味津々でキミを見つめていると、キミはフロントに電話を掛けて、するとぼくが入ってきた後再度ロックがかかっていた部屋の鍵が、カチャンと音をたてて解除される。

おいおい、ちゃんと後始末しようぜ。

呆れたぼくはやれやれと大きく首を振りながら、茫然自失で立ち尽くす彼に歩み寄り、耳元でこう囁く。

「このことは、他言無用だ。普通入れないはずのラブホテルに乱入した男は、見くびらない方がいい。一切忘れた方がいい。今後彼女に絡むのは別に構わないが、今日のことをどこかで口にしたらどうなるか、想像を働かせるんだ。わかったな」

ヤッてることは手荒だが、思ったよりも丁寧なぼくの言葉に、彼はほっとしたのか「わかりました」と素直に答えたから、「じゃ」、と言ってぼくもその部屋を立ち去る。

キミと一緒に乗り込む、ラブホテルのエレベータ。

なぜか、帰り道だけ一緒に乗るのがとても不思議な感覚。

ラブホテルを出ると、ぼくが着いたときに降っていた小雨はもうやんでいた。

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