12 fly me to the moon

明るい店内から暗い夜道に出たぼくは、急激な闇に包まれて、一瞬君の姿を見失いそうになった。

あわててすぐ近くにまだキミの姿を確認したぼくの顔は、きっと少し不安そうに見えていることだろう。

さっきまで異性に自分でスカートを捲ってパンツを見せつけて、ちょっとした女王様気分を味わう早熟な少女のようないたずらっ子の顔をしていたキミは、ぼくの前に立って、今は少し気の抜けた表情でぼうっと立っている。

さあ、私を誘ってと言うようにもとれるし、もうこれでかえるというようにも受け取られる。

そしてキミはとてもゆっくり、顎を2度くらい上に上げて僕の目を見ながらこう言った。

「あなたは、私をどこに連れて行こうとしているんだろう?」

それはもちろん、次の店をどうしようかとか、ラブホテルに行くのか行かないかとか、そう言ったたぐいの質問ではないことくらいはわかっていた。

キミはぼくを怖がっている。

僕がキミのなにか大切なものを奪ってしまうのではないかと。

僕は答える。

「キミの、望む場所だ」

その言葉にまったく嘘はない。

キミから敢えてなにかを奪おうなんて考えてはいない。

だけれど。

恋に堕ちたら、なにが起こるのかはまったく予想できないと言うことを、僕は学んでいた。

だから、なにも奪わないと答えることができなかった。それは多分、嘘になってしまう。

するとキミは、

「僕は何も望んでいない。あの時、そう伝えたはず」

と。

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