11 Nipple Quiz

「久しぶり」
「うん久しぶり」

もう二度と会わないといっていたキミとまた会ったのは、このあいだのはじめてのデートから二ヶ月後。

あれほど最後に拒絶していたキミとまたこうして会うことができた理由は、それほどたいしたものでもない。

ぼくだって、最後の夜にキミが教えてくれた、ふたりだけの秘密でもある会えな理由を聞いてからは、少しキミを遠ざけていたけれど、そう言いながら結局、社会的規範に対するぼくたちの束縛は、その後も続いたミニブログでの言葉の重なりの誘惑に比べれば、さしたる重みがなかったようだ。

「ここ?」

キミはぼくが探した寿司屋の看板を指さしながらきょとんとした顔でぼくにそう尋ねる。

「うんここ。気に入らない?」

「いや、別に」

そう言うと一人で勝手にガラガラと引き戸を開け、店の中に入ってしまうキミ。

予約しておいたのは個室の席。

目が飛び出るほど高級な店でもなく、でもせっかくこうしてキミに会えるなら、キミだけをゆっくり見ていられるために用意した。

ぼくが求めているのは、ぼくとキミだけが存在する世界なんだから。

薄い障子で区切られている個室に案内され、キミは紫色のパンプスを脱ぎ、畳の部屋に入る。

ぼくはその仕草と、生足のふくらはぎの緩やかならインに目を奪われ、暫く部屋の外から畳にしかれた座布団に座るまでの君をじっと見つめてしまった。

一度しか会ったことないのにその姿を見るぼくは、とても懐かしい感覚で満たされていた。

ぼくはキミの正面に座り、じっとキミを見つめるわけでもなく、でも視界のどこかに君の姿を映しながら

「元気だった?」

と聞くと

「ご存じの通り」

キミの動向を、キミのミニブログでチェックしていることくらいお見通しだし、多分それはお互い様なのはわかっていた。

キミは3日に一回程度の頻度で、いまからどこかの男に会いに行くシーンを描写して、その様子を匂わせながら、その翌日は夜までなにも書き込まない。

それを見るぼくは、夜更けのどこか知らない街で、ぼくの知らないどこかの男とセックスして、多分ちゃんとコンドームは着けて、3回くらい「いく」って言って、朝のまどろみはその男の毛深い腕の中で目覚めて、目を覚ましていない相手のを咥えながらニコニコして、男が起きたらちゃんとしたセックスをして、男のコンドームを外して結んでゴミ箱に捨ててから、ブラとショーツを着けて、朝食を近くのカフェで男と一緒にとって、ランチ前にまた男の部屋に戻って、セックスして、午後の気怠い陽光をふたりで裸で浴びながら、時計の秒針の音だけの男のむさ苦しい部屋の閉ざされた世界でじゃれ合って、夜になってから近所の小洒落たイタリアンでのディナーから、また部屋に戻ってセックスして、男が「1日で4回射精したのははじめてだ、さすがだね」ってキミの耳元で囁いて、まんざらでもない顔で男の部屋を出て自分の部屋に戻る君の姿を、ただ妄想するしかなかった。

でもそれは決して深いない出来事というわけでもなく、どこかでぼくもそれを楽しんでいた。

そう、ぼくたちは、共犯者だから。

多分その、キミではじめて1日で4回射精した男は、キミの核心を知らない。

それだけが、ぼくにとっての優越感だった。

そんな妄想をしながら、差し障りのない世間話をしていると、注文した寿司のコースが運ばれてきて、こんな頼み方は通じゃない!とキミが怒り出すわけでもなく、ぼくたちの時間は穏やかに流れていく。

そしてぼくはふと、ある悪戯を思いついた。

「じゃあ、乳首の位置当てさせて」

以前彼女の投稿に、

「特技は服の上から男性の乳首の位置を当てることです。正答率96%です」

みたいな書き込みがあったのを思いだして、ぼくは試しにそう聞いてみる。

「ああ、あれか。僕が当ててあげるよ」

キミは曖昧な顔をしながらそう答える。珍しく、歯切れが悪い。

「それじゃあつまらない。当たって当然なんだろ?それに僕の乳首は極めて一般的な場所にある」

意地悪く僕はそう答える。

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