06 SEX

「2時間寝る。起こして」

と君はぼくに命令した後に、

「寝てる間になにしてもいいけど、僕を起こしたらぶっ殺すからね。寝起きはあまり良くないんだ」

と続けた。

そう言い終えたキミはその10秒後に、瞳を閉じて、下弦の月のような綺麗なまつげを呼吸に合わせてゆっくりと揺らしながら、すーすーと軽やかな寝息を立てはじめた。

ここは白いシーツのダブルベッドの上。

バスルームから出たてのぼくとキミは二人とも裸のまま。

という、シチュエーション。

3年交際した後のカップルが、懐かしい刺激を求めてラブホテルに来たのなら、まあ、わかる。

だが、ぼくとキミはまだはじめて会ってから12時間程度。

しかも、さっきバスルームで少しだけキミの体に触れたとはいえ、肉体的な意味ではまだそれだけの関係だ。

そんなぼくたちは、いや、キミは、裸でシーツにくるまって、ぼくを残して寝てしまった。

いや、文句を言うつもりはない。キミは疲れている。2時間の休憩後にキミを起こすのはぼくの使命だ。

だが。

ぼくは一体どうしたらいいのだろう?

キミが纏うシーツを剥ぎ取れば、キミの体のすべてを僕は見ることができる。

日常という時間を生きていてキミのように若くて綺麗な女の子の全裸の肢体を、あますことなく遠慮せずに見ることができる時間なんて一体どのくらいあるかと考えると、実際のところのそのような状況はステディーにつきあっている彼女以外とはまずあり得ないレアケースと断言しても間違いないだろう。

行きずりの女ならともかく、キミとはそういう関係でもない。

しかも、寝息を立てる前のキミは、

「何をしてもいい」

と断言した。

シーツをめくってそれを見るだけであれば、キミの示したたったひとつの条件は破られることはないはずだ。

だけど、その一方で「紳士たれ」という声が頭の中で響いている。

眠っている女の子の裸に、舐め回すような視線を送る自分ではありたくない。決して。

という、葛藤。

そして、自分も眠いという現実もある。

運転こそしてこなかったけれど、キミと同様ぼくも昨日の朝目覚めてからずっと寝ていない。

心の中で不穏なうなり声を上げながら、ぼくはシーツにくるまったキミから顔を離し、仰向けになって両手を上に上げ、手首の重なる場所に頭を乗せて少しだけのびをする。

せめてキャミでも身につけていてくれたら。

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