04 危険なMission

IMG_2108

「JUN、入ります」

自動ドアが開くと同時にJUNは声に出しながら部屋に入る。

ラバーズ部隊の隊員には階級も姓名もなかった。

あるのは個体を識別するためのニックネームのみ。

ニックネームは以前の本名の一部だったり、全く関係ない名前だったり様々だ。

例外は御井菜隊長だけだった。その理由をJUNは詳しくしく聞いたことがなかったが、多分そもそも軍属だったのがその理由だろう。

パーテーションの向こうに、隊長とラバーズの女性隊員リンが座っていた。

リンと隊長はそれまで何かをしゃべっていたようだが、JUNの姿を見つけると示し合わせたように口をつぐんだ。

それが今からの件に関することなのか、それともただの世間話だったのかはJUNにはわからなかった。

「どうした、SAKURAと喧嘩でもしたのか?」

JUNが席に着くと、別段嫌みな感じでもなく御井菜がそう尋ねる。

「どうしてそんな?」

見透かされたことにびっくりしたが、隊長は隊員のステータスを常時モニターできるわけだから、さほど不思議なことでもない。

「SAKURAのコミュシステムが切られている。つまり、彼女はいま君と話したくないと言うことだ」

「必要であれば隊長が強制的にオンにしてやってください」

「もうしてますけど何か?」

そう答えたのは隊長ではなくSAKURA。

「ブリーフィングの約束時間です。はじめましょう」
何もなかったかのように話しながらも、苛立ちを隠せないSAKURAの声に、JUNは苦笑いしながら、そんなSAKURAもまたかわいらしいなと思う。

言いたいことを言っているようで、肝心なことは口に出さない。

SAKURAはずっとそう「だった」。

だが、今は違う。ZAFに搭乗し神経接続モードで触れあう二人の間に、ときおりちょっとしたすれ違いはあるにしても、隠し事や、憎しみも、嘘はなかった。

ぼくたちには別れはない。

それがどれほど素晴らしいことか、JUNは実感していた。

なぜならその前に、彼は取り返しの付かない別れを体験してしまっていたから。

でも今は、例え喧嘩をしようと、別れ話をしようと、最終的には必ず愛しあうことができる。

それはシステムや心理操作という意味ではなくて、一度、本当の別れを体験した者にしかわからない「一番大切な者を大切に守りたい」という原理を知っているから、自分はそのように生きると決めたから。

「その前に、電波シールドをオンにしてくれ」

御井菜が部屋の入り口にあるスイッチを見ながらJUNに指示する。

部屋の中での会話が秘密の場合、情報が外部に漏れないように部屋の中を電波的に隔離する機能だ。

その場合外部からの無線も受信できなくなり、緊急連絡は有線の通信、または人力のみとなる。

JUNは立ち上がりドアの横のスイッチをオンにする。

部屋の照明は徐々にオレンジ色にかわり、薄暗い部屋と調度品のシルエットがシールドモードであることを、そこにいる人間に知らせる。

「今日君たちに来てもらったのは、前回の作戦で捕虜とした早波中佐の件だ」

御井菜隊長が即切り出すと、JUNは少し驚いた。

  • Facebook
  • twitter
  • Hatena
1 2 3 4 5 6 7 8