03 禁じられたパートナー

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まだ冬の前だというのに、重苦しく垂れ込めた灰色の雲に包まれた見るだけで気が重苦しくなるモノトーンの景色にとけ込み、まるでその簡易の建物自体が迷彩色のように見えるロシアの果てにあるキャンプに、この3ヶ月ラバーズ部隊は足止めされていた。

反転しつつある戦局の流れなのか、前線は膠着し、精鋭部隊であるラバーズに出動命令が発せられる機会は以前と比べて少しだけ減っていた。

ラバーズの隊員にしてみれば、仮想とはいえ現実とまったく変わらない体験ができる生身でのパートナーとの接触は、実戦の時だけなので、戦場に出られないことがが逆にフラストレーションになる場合もある。

JUNをはじめとする隊員は、死と隣り合わせでありながら、パートナーと文字通り一体となれる戦場での体験を、恐れながらもずっと待ち望んでいた。

ただし、待機時間の全てが孤独であるわけでもない。

肉体的感触を伴わない「視覚」と「聴覚」だけならば、AIを「連れ歩く」ことができるキューブと呼ばれる端末に、神経接続デバイスで接続すれば、コミュニケートできる。デバイスは有線でも無線でも接続できるから、キューブをその範囲内に置けば、隊員の知覚をパートナーシステムが書き換えて、仮想空間でパートナーと共にいることも可能だ。

その気になれば擬似的なラバーズモードだって体験できる。

JNUはラバーズの戦士になってからしばらくは、ずいぶんと「それ」でSAKURAと交わった。

SAKURAもそれを拒まなかった。

それにより、やはり自分はSAKURAに愛されていたのだと、JUNは感じていた。

仮の記憶でつくられたA.I.であるにしても、体をも求められ拒絶しないと言うことは、それは愛を意味するに違いない。

JUNはそう信じた。

ただしZAF本体に装備されている、肉体感覚を機械的に再現するサポーターは利用できない。

実際、自室で仮のラバーズモードを体験していたJUNは、そのたびに射精していた。

脳への刺激だけで、ただ射精するだけなら充分だ。

退屈な自室での待機時間、ほんの数ヶ月前の出来事を思い出しながら、でも、過去の記憶ではあまり幸せになれないことをJUNは確認する。

あの時の記憶と傷が消えた訳ではない。

「ねえ、JUN」

目が覚めてからまもなく、午後からの訓練に備えて身支度を始めたJUNに、SAKURAが直接音声で話しかける。

「結局、早波中佐は、本体に護送されてないんだよね、まだ」

そう、先の作戦で捕虜になった裏切り者の士官は、すぐさま軍法会議なりにかけられるために本国へ護送されるものだとばかり思っていたら、かれこれ一週間以上たつというのにまったくそのような気配がない。

「そうだな、彼が、自分にはそういう能力云々って語ってたのが不気味だ。もしかしたら俺たちや隊長を飛び越えて軍の上層部と掛け合ってるのかも知れない」

あの時の早波中佐と御井菜隊長の会話を聞く限り、そう言った可能性がないとは言い切れない。普通に考えればあり得ないことではあるが。

「少し調べたんだけど・・・」

何となく言いにくそうな口調でSAKURAがそうつぶやく。

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