02 バトルパートナー

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「GO!GO!GO!GO!GO!!!!!!」

ヘッドフォン越しに隊長の声が鳴り響くと同時に、岩陰に潜んでしゃがんでいたJUNは、全身の力を込めて自分の体を斜め上に向けてジャンプさせる。

その挙動を筋肉から発せられる微弱な電波から察知したバイオフィードバックシステムは、自動的に甲殻型外筋肉の膨ら脛につけられたジェットスラスターを、ジャンプした方向の反対側に向け点火。

その動作は、あくまでもJUNの肉体の延長線上であり、昔の日本のアニメみたいな巨大ロボットではないが、ZAF-37なら少しの間なら空を飛ぶことだって可能だ。

しかもJUNのZAFはラヴァーズ専用にチューンアップされた特殊仕様だ。

ラバーズ部隊の専用装備は個別にチューンされたワンオフのパーツで構成されている。

赤外線スコープで前方の視界を確認しながら、跳躍したJUNは約30メートル前方の地面に着地し、砂埃を上げながら占拠すべきコンクリートの建物の入り口まで走る。

そのスピードは人間の約3倍。

さらにパワーアシストされているため、ZAFの操縦に慣れてしまえば、搭乗者が肉体を動かすことによる疲労は限りなくゼロになる。

極端に言えばJUNはただ自らの「意思」をZAFに伝えるために、仮想的に両足を動かしているに過ぎない。

大きな火柱と爆音と共に、後方からの通常部隊の支援で建物の重い扉がこじ開けられた。

爆発の熱を気にすることなく、僕たちラバーズ部隊の8人はその扉の中に飛び込む。

熱は自動的に外骨格の金属を伝導する前に内部の水冷システムで冷却される。

「目標地点を確認しろ、トラップの可能性が高いから気をつけろ」

部隊長にいわれなくてもわかっている。

そもそも敵はこの拠点を本気で守りたいのかどうかすらわからない。

今回の作戦は謎が多かった。

いつもなら本隊のサポート的に撹乱するのがラバーズ部隊の作戦なのだが、なぜか今回はラバーズ部隊が主導する作戦を本隊がサポートしている。

しかも、敵の戦力は通常部隊でも充分掃討可能な程度に思われた。

そんなことを考えながらJUNはHMDに表示される建物内の中心、つまりこの作戦で捕獲しなければならない敵軍の指揮官がいるはずの部屋へのルートを確認する。

途中で遭遇するのはほとんどが生身の兵士だった。

ラバーズ部隊が使用するZAFという鎧を装備することもなく、ありふれた迷彩服を着た兵士たち。

ボクは彼らを右腕に装備したマシンガンで薙ぎ払う。

それは簡単なことだ。

右腕を奴らに向けて差し上げ、いや、実際は右腕をあげようと意識すればZAFの人工筋肉が反応し、自分の肉体の延長線上にある外骨格の腕が持ち上げられ、ターゲットをスコープにロックオンし「撃て」と意識すれば、右腕のマシンガンの先端は標的をロックオンして、一瞬にして彼らは血をまき散らしながら崩れ落ちていく。

ZAFは武器であり、無敵の鎧だ。

だから、通常弾程度ではZAFの装甲を打ち抜くことはできない。

ロケットランチャーが直撃でもしたら諦めざるを得ないが、半径50メートルまで自動的に索敵するレーダーに、高速で向かってくる何かが反応すると、ZAFは自動的に回避行動に入る。

中身の人間の意識に関わらず。

それは兵士の命を守るというよりも、ZAF自体を守るためなのかも知れない。

何しろこいつは1台あたり最新鋭ジェット戦闘機と同じだけの生産コストがかかっている。

開発コストを抜いてだ。

だが、恐らくラバーズ部隊は別だ。

ラバーズ部隊のメンバーになるための資質を持った人間がそれほど沢山いるとは思えなかった。

「JUN、左前方に敵影!」

隊長とは異なる声が敵の存在を知らせる。

緊急性がありながら、穏やかに包み込まれるような優しい声。

もちろんオペレーターでもない。

「わかっている」

敵の姿はHMDにマーキングされている。

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